公開日 11/03/2021 最終更新日 26/02/2023
グスタフスベリについて
- メーカー名 : グスタフスベリ(GUSTAVSBERG)
- 設立 : スウェーデン・ストックホルム・グスタフスベリ地区(1826年)
1826年創業のスウェーデンの磁器メーカー。
企業としては1990年代に離散し、多くの部門が売却されたが、職人たちは創業地であるグスタフスベリ地区で陶器や家庭用磁器の製造を続けている。
ヨゼフ・エクベリ(Josef Ekberg)、ヴィルヘルム・コーゲ(Wilhelm Kåge)、スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)、リサ・ラーソン(Lisa Larson)など、スウェーデン陶芸界、アート界の巨匠とも言える人物を多く輩出し、デザインの黄金期であるアールヌーボーからミッドセンチュリーの時代にかけて、数々の名作を世に送り出したグスタフスベリとそのアーティストたちをご紹介していきます。
ヨゼフ・エクベリ / Josef Ekberg(1877-1945)
1908 – 1917年にかけてグスタフスベリでアートリーダーを務めた。
在籍期間は、1889年から彼が死を迎える1945年まで。
12歳でそのキャリアを見習いとしてスタートさせ、最終的にはペインターとしてのポストを得る。
1890年代に、ズグラッフィート※とラスターグレーズ(光沢釉薬)を発展させた技法を考案するなど、陶芸界における革命児として知られます。
- ※ズグラッフィートとは
- 2層の対照的な泥漿(でいしょう)からなる、窯で焼いていない陶磁器の素地に用いられる陶芸技法で、櫛などの道具で表面を梳いて縞や波を描きます。
ヴィルヘルム・コーゲ / Wilhelm Kåge(1889-1960)
グスタフスベリでアートリーダーを務めたひとり。
スティグ・リンドベリ成功の立役者であり、師として知られる。
ストックホルム内の学校にてペイント装飾を学び、その後ヨーテボリ、コペンハーゲンなどでペインターに師事し、ペイント技法を学ぶ。
初期のキャリアは広告ポスターなどのデザインでスタートしたが、陶芸の世界でその才覚を発揮させ、1917年にグスタフスベリのアートリーダーとなり、1949年まで在籍する。
代表作は、緑の釉薬にシルバー(銀)を用いて装飾を施したアルジェンタ(ARGENTA)シリーズで、発表すると同時に市場を席巻し、形やデザインを変え、数々のアイテムが発表された。
バリヤ・スクーギ / Börje Skohg(1923 – 2006)
20世紀のスウェーデンを代表する芸術家、陶芸家としてグスタフスベリでは40年間に渡り活躍しました。
ストックホルムの美術学校で学んだ後、1947年にグスタフスベリ入社。
彼の最初の仕事はバスタブの製造でしたが、すぐにその才覚をヴィルヘルム・コーゲに見出され、コーゲの代表作であるアルジェンタの製造部門へと異動。主にシルバーでレリーフをペイントしたタイルの製造に当たりました。
1950年代後半になると、後にアメリカで人気作となる石にシルバーでペイントを施した作品の制作に取り掛かり、大きなマーケットを築きます。
1987年にグスタフスベリを離れますが、その後も独自に個展を開くなどして精力的に活動を続けました。
スヴェン・ヨンソン / Sven Jonson(1919 – 1998)
1934年から1981年までと長きに渡りグスタフスベリで活躍したデザイナー、アーティスト、イラストレーター。生まれはグスタフスベリの所在地であったグスタフスベリ地区。
アルジェンタや自身によるデザインのシリーズであるラグーン(Lagun)、ファチェット(Facett)などの制作に携わる。
1971年から1980年に掛けてはクリスマス・アニュアルプレートの制作を手掛けました。
ハインツ・エレット / Heinz Erret(1920 – 2003)
ドイツ・ライプツィヒ生まれのドイツ人。育ちは、現在チェコの一部であるカールスバート(Carlsbad)※。磁器のデコレーションパターン製造会社を所有するペインターである父のもとに生まれる。
1934年から1940年までの間は彫刻家としての教育を受ける。戦争の勃発により1945年まで収容されるが、後に釈放。ヨーロッパを旅する。渡航中に父がコーゲと出会ったことにより、息子であるハインツを紹介する。これをきっかけに1949年にグスタフスベリ入社。アルジェンタの制作に携わる。
エレットはシルバーペインティングの技術をすぐに習得し、アルジェンタが終焉を迎える1970年代までその制作に携わります。時を同じくして、1972年から1985年に掛けて自身のデザインによるスウェーデンの花シリーズをシルバーペイントで制作。このアイテムがグスタフスベリにおけるアルジェンタに始まったシルバーペイントシリーズの最終作となります。
- ※チェコ語 : カルロヴィ・ヴァリ(Karlovy Vary)
- 温泉保養地として有名な街で、007カジノロワイヤルの撮影のロケ地にもなっています。詳しくはこちら。
スティグ・リンドベリ / Stig Lindberg(1916 – 1982)
スウェーデンアート界を代表する世界的な陶芸家、デザイナー、アーティスト。
スウェーデン陶芸界を代表する人物であり、北欧食器といえばリンドベリのベルサが代名詞とも言えるほど。その他、多くの人気作品や傑作を生み出しており、現在も当時のデザインを用いた復刻版が数多くのシリーズで製造され続けています。
また、リサ・ラーソンの師匠としても知られ、彼女の活躍はリンドベリ抜きには語れないと言えるほど彼女の活躍にも深く関わった人物です。
より詳しくご覧になりたい方はこちら。
リサ・ラーソン / Lisa Larson(1931 – 現在)
スウェーデンアート界を代表する世界的な陶芸家、デザイナー、アーティスト。
日本でも知名度、人気が非常に高く、各地で作品展が催されたり、ユニクロや郵便局でコラボグッズが展開されるほどの人気を誇ります。
スウェーデンアート界の鬼才であり、リサ・ラーソンの師匠でもあるスティグ・リンドベリにその才能を見出され、ミッドセンチュリーに表したその頭角は現在も衰えることなく、グスタフスベリを離れてもなお精力的に活動を行い、自身のスタジオから人気作品を発表し続けています。
より詳しくご覧になりたい方はこちら。
【20.20のちょっとうんちく北欧ヴィンテージ】アルジェンタとデザイナーたち
ヴィルヘルム・コーゲによって生み出され、緑の釉薬と銀のペイントによる美しいコントラストで瞬く間に市場を席巻したアルジェンタシリーズ。
1930年代から1970年代と半世紀近くにも渡り製造されるロングセラーであり、スウェーデンのアール・デコ期における代表作として知られます。
その長い歴史において、初期は生みの親であるコーゲ自身がペイントを担当しました。しかし、そこからすぐにアルジェンタの部門が設立され、1930年代後半には30人ものペインターなどのスタッフを抱える大きな部門になります。
アルジェンタが初めて世に送り出されたのは1931年のロンドン。1936年にはニューヨークへ上陸し、大きなプロジェクトとなります。それに伴い、レッドやブラウン、ブルーなども製造されたようですが、グリーンほどの成功となるものはありませんでした。そして、1940年代に入るとアルジェンタは全盛期を迎えます。
新しいデザイナーと新たなシリーズ
そこから、さまざまなデザイナーたちによってバラエティー豊かに改良が加えられていき、1946年にはホワイトをベースとしたグラツィア(Grazia)シリーズがスティグ・リンドベリによりデザインされます。1955年になると、アルジェンタシリーズそのものがリニューアルされ、アルジェンタ・ノーヴァ(Argenta Nova)となり、その後もアルジェンタシリーズのペインターを務めていたバリヤ・スクーギによって石や陶板にペイントを施したもの、スヴェン・ヨンソンによるラグーンシリーズなど、次々と新たなシリーズが誕生します。
しかし、1970年代に入るとその人気にも陰りが見えはじめ、ハインツ・エレットによる作品が最後のシルバーペイントのアイテムとなり、1990年代にはグスタフスベリ社そのものが殆どの部門を売却し、離散してしまいます。
20世紀のグスタフスベリの歴史ともいえるほど長期間に渡るロングセラーとなり、多くの偉大なデザイナーたちが携わった名シリーズ、アルジェンタ。いかがでしたでしょうか。
是非みなさまもお気に入りの一点を探してみてください。
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ウェブストアおよび実店舗オーナー、インポーター、エクスポーター、アンティーク&ヴィンテージコレクター、ファッションコーディネーター、旅人
ヨーロッパ長期滞在は3ヶ国(イタリア、アイルランド、デンマーク)でトータル2年半。 現在は日本を中心に活動しながら商品買い付けや旅などでヨーロッパを訪れています。旅はヨーロッパ限定で20ヶ国程度。
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